この記事は、クラウドワークスで募集した「ハラスメント体験談」の記事を書いてくださったみさきさん(20代女性)の記事です。
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介護業界で働く多くの人が直面しているハラスメント問題。
私も介護職として働く中で、様々な形のハラスメントを経験しました。
この記事では、20代女性である私が実際に体験したハラスメントの実態と、その対処法について赤裸々にお話しします。
同じような悩みを抱えている方の参考になれば幸いです。
私が介護職を選んだ理由
大学で社会福祉学を学んだ私は、卒業後、人の役に立つ仕事がしたいという強い想いから介護職を選びました。
高齢化社会が急速に進む中で、お年寄りの方々の生活を支え、その人らしい生活を実現するお手伝いをすることに大きなやりがいを感じていました。
実習期間中に出会った利用者の方々との温かい交流や、「ありがとう」という言葉をいただけた時の喜びは、今でも忘れることができません。
介護は人と人との心の繋がりを実感できる素晴らしい仕事だと心から思っていました。
特別養護老人ホームに正職員として就職が決まった時は、家族も喜んでくれましたし、私自身も社会貢献できる仕事に就けることを誇らしく思っていました。
しかし、実際に働き始めてから、学生時代には見えなかった厳しい現実と理想とのギャップに直面することになります。
体験したハラスメントの実態
利用者からの不適切な行為
最も辛かったのは、利用者からの不適切な言動でした。
介助業務中に必要以上の身体接触をされたり、プライベートな内容の発言をされることが度々ありました。
認知症の方の場合、症状の一つとして捉えられがちですが、それでも女性職員として非常に不快で恐怖を感じました。
特に印象に残っているのは、ある男性利用者からの継続的な不適切な言動です。私が担当になってから、介助を拒否されたり、他の職員の前で私だけを呼び出して不快な発言をされることが日常的になりました。
具体的には
- 介助中の不適切な身体接触
- プライベートな内容に関する発言や要求
- 夜勤時の個室での威圧的な態度
- 他の職員がいない時を狙った不適切な行動
この状況について上司に相談しても、「認知症の症状だから我慢して」「介護職なら当たり前」といった対応しかしてもらえませんでした。
女性職員の尊厳が軽視されている現状を痛感しました。
職場の上司からのパワーハラスメント
職場の人間関係も大きなストレスでした。
特に、中間管理職の男性上司からのパワーハラスメントは深刻でした。
新人だった私に対して、理不尽な叱責や過度な業務負担を強いられることが日常的にありました。
この上司は、介護業界で長年働いているベテランでしたが、古い価値観を持っており、「若い女性は甘えている」「根性が足りない」といった考えの持ち主でした。
新人研修期間中から、私に対して特に厳しい態度を取るようになりました。
- 他の職員の前での人格を否定するような叱責
- 明らかに一人では対応できない業務量の押し付け
- 休憩時間の削減や有給取得の妨害
- 「嫌なら辞めればいい」という脅迫的な発言
- 私のミスを必要以上に大きく取り上げる一方で、他の職員の同様のミスは見逃す
- 業務に関係のない個人的な価値観の押し付け
特に辛かったのは、利用者の前で大声で叱責されたことです。
プロとしての尊厳を傷つけられただけでなく、利用者の方々にも不安を与えてしまいました。
同僚からの嫌がらせ
同僚との関係性も複雑でした。
特に年配の女性職員からの精神的な嫌がらせは陰湿で、仕事のミスを必要以上に責められたり、情報を意図的に教えてもらえないことがありました。
介護業界では、長年働いているベテラン職員の発言力が強く、新人は従うしかない雰囲気がありました。
私が大学卒業という学歴を持っていることも、一部の職員には快く思われていなかったようです。
- 業務に必要な情報を意図的に教えない
- 私だけ重要な会議から外される
- 私の提案や意見を頭ごなしに否定する
- 休憩時間に私だけ仲間外れにする
- 利用者の前で私の悪口を言う
- 私が担当する利用者の情報を他の職員に話さない
この状況が続くことで、チームワークが重要な介護現場で孤立感を深めていきました。
ハラスメントが与えた影響
心身への影響
継続的なハラスメントにより、私の心身には以下のような影響が現れました:
精神面:
- 常に緊張状態で仕事をするようになった
- 睡眠障害(夜勤の影響もあり悪化)
- 食欲不振と体重減少
- 抑うつ状態
身体面:
- 慢性的な頭痛
- 胃痛や腹痛
- 肌荒れ
- 免疫力低下による風邪の頻発
仕事への影響
本来大好きだった介護の仕事に対しても、次第に嫌悪感を抱くようになりました。
利用者の方々との関わりさえも、ハラスメントの恐怖から素直に楽しめなくなってしまいました。
毎朝出勤する前に吐き気を催すようになり、職場の建物を見るだけで動悸が激しくなりました。
夜勤明けで疲れているにも関わらず、帰宅後も職場でのことが頭から離れず、十分な休息を取ることができませんでした。
また、利用者の方々に対しても、以前のような自然な笑顔で接することが困難になりました。
介助を行う際も、常に周囲の目を気にして緊張状態が続き、本来の介護技術を発揮することができなくなってしまいました。
社会生活への影響
職場でのストレスは、プライベートの時間にも大きな影響を与えました。
友人との約束をキャンセルすることが増え、次第に人との関わりを避けるようになりました。
家族との会話も減り、心配をかけたくない一心で、一人で抱え込んでしまう状況が続きました。
休日も外出する気力がなく、部屋にこもって過ごすことが多くなりました。
趣味だった読書や映画鑑賞も楽しめなくなり、何に対しても興味を失ってしまいました。
私が取った対処法
1. 記録をつける
最も重要だったのは、すべてを記録することでした。
- 日時、場所、相手、具体的な内容
- 目撃者がいる場合はその人の名前
- 自分の感情や身体の変化
この記録が後の相談や対処において非常に役立ちました。
2. 信頼できる人への相談
一人で抱え込まないことが大切です。
最初は家族や友人に相談し、その後職場の信頼できる先輩にも話しました。
客観的な意見をもらうことで、自分の状況を冷静に分析できるようになりました。
3. 外部機関への相談
職場内での解決が困難と判断し、以下の機関に相談しました。
- 労働基準監督署
- 都道府県の労働相談センター
- ハラスメント相談ホットライン
専門家からのアドバイスにより、法的な対処法についても理解を深めました。
労働基準監督署では、労働環境の改善について具体的な指導をしていただき、私の状況が法的にも問題のあるケースであることを確認できました。
相談員の方は親身になって話を聞いてくださり、一人ではないということを実感できました。
また、ハラスメント相談ホットラインでは、同じような経験をした他の方の事例も教えていただき、自分だけが特別に弱いわけではないということを理解できました。
4. 職場での対策の試み
外部機関での相談を受けて、職場での改善も試みました。
まず、施設長に直接相談の場を設けていただき、記録した内容を基に具体的な改善を求めました。
しかし、「そんなつもりはなかった」「誤解だ」という反応が多く、根本的な解決には至りませんでした。
それでも、外部機関に相談していることを伝えたことで、一時的には状況が改善されました。
しかし、しばらくすると元の状態に戻ってしまい、さらに「告げ口をした」として新たな嫌がらせを受けるようになりました。
5. 転職活動の開始
最終的には職場を変える決断をしました。
同じ介護職でも、職場環境の良い施設は確実に存在します。
転職活動中は、面接時に職場環境について積極的に質問するようにしました。
転職活動では、以下の点を重視しました。
- ハラスメント防止への取り組み状況
- 職員の定着率
- 研修制度の充実度
- 職場の雰囲気や人間関係
- 労働条件の透明性
面接では、前職での経験を踏まえて、職場環境について率直に質問しました。
中には質問を嫌がる施設もありましたが、そういった施設は避けるべき職場だと判断しました。
現在の状況と学んだこと
新しい職場での変化
転職後の職場は、ハラスメント防止に積極的に取り組んでいる施設でした。
- 定期的なハラスメント研修の実施
- 相談窓口の設置
- 職員同士のコミュニケーションを重視した職場づくり
この環境で働くことで、本来の介護への情熱を取り戻すことができました。
新しい職場では、入職初日からハラスメント防止に関する研修を受けました。
施設長自らが「職員の尊厳を守ることが利用者の尊厳を守ることに繋がる」という理念を語り、具体的な対策についても説明してくださいました。
また、月1回の職員会議では、職場環境について話し合う時間が設けられており、小さな問題でも気軽に相談できる雰囲気が作られています。
上司との面談も定期的に行われ、業務上の悩みだけでなく、人間関係についても相談できる体制が整っています。
最も大きな変化は、利用者の方々との関係性です。以前の職場では、常に緊張状態で介助を行っていましたが、現在は自然な笑顔で利用者の方々と接することができています。
「○○さんの笑顔が一番素敵ね」と言っていただけた時は、介護職として働くことの喜びを改めて実感しました。
職場環境の違いから学んだこと
二つの職場を経験して、職場環境の重要性を痛感しました。
良い職場の特徴:
- 管理職がハラスメント防止に真剣に取り組んでいる
- 職員同士が互いを尊重している
- 新人教育が体系化されている
- 相談しやすい雰囲気がある
- 業務量が適正に管理されている
- 職員の心身の健康に配慮している
問題のある職場の特徴:
- 「昔からのやり方」に固執している
- 上下関係が厳しすぎる
- 個人の人格を否定するような指導が行われている
- 相談しても改善されない
- 職員の入れ替わりが激しい
- 精神論だけで問題を解決しようとする
学んだ教訓
この経験を通じて学んだ重要なことは。
1. 我慢は解決にならない 問題を放置していても状況は改善されません。むしろ悪化する可能性が高いです。
2. 記録の重要性 具体的な証拠があることで、相談先での対応が大きく変わります。
3. 一人で抱え込まない 信頼できる人への相談は、精神的な支えになるだけでなく、客観的な判断材料も得られます。
4. 職場選びの重要性 同じ職種でも、職場環境によって働きやすさは大きく異なります。
今ハラスメントに悩んでいる方へ
すぐにできる対処法
今すぐできることから始めましょう。
- 記録をつける:詳細な記録は必ず役に立ちます
- 信頼できる人に相談:一人で悩まないでください
- 自分の健康を最優先:心身の健康を犠牲にしてまで我慢する必要はありません
記録をつける際は、感情的にならずに事実を客観的に記録することが重要です。また、可能であれば録音や写真なども証拠として残しておくと良いでしょう。
信頼できる人への相談では、職場の同僚だけでなく、家族や友人、専門機関など、様々な視点からアドバイスをもらうことが大切です。
職場選びのポイント
転職を考えている方は、以下の点をチェックしてください:
面接時に確認すべき項目:
- ハラスメント防止研修の実施状況
- 相談窓口の有無と機能
- 職員の平均勤続年数
- 離職率
- 新人研修の内容と期間
- 職場の雰囲気(見学可能か)
避けるべき職場の特徴:
- 面接官の態度が高圧的
- 労働条件があいまい
- 「根性論」を強調する
- 職員の表情が暗い
- 職場見学を嫌がる
- 前職の退職理由を根掘り葉掘り聞く
心の健康を守るために
ハラスメントを受けている時の心のケア
ハラスメントを受けていると、自分に非があるのではないかと考えがちですが、ハラスメントは受ける側に責任はありません。これは何度でも自分に言い聞かせてください。
また、一人で抱え込まずに、以下のような方法で心のケアを行うことも大切です:
- 趣味や好きなことに時間を使う
- 適度な運動を行う
- 十分な睡眠を取る
- バランスの取れた食事を心がける
- 信頼できる人との時間を大切にする
- 必要に応じて専門家のカウンセリングを受ける
相談できる機関
以下の機関では専門的なサポートを受けられます:
- 労働基準監督署:労働条件に関する相談
- 都道府県労働局:職場のハラスメント相談
- 法テラス:法的トラブルの相談
- こころの健康相談統一ダイヤル:精神的な悩みの相談
まとめ
介護職でのハラスメントは決して珍しいことではありませんが、我慢する必要は全くありません。
私の体験が示すように、適切な対処をすることで状況は必ず改善できます。
何より大切なのは、あなた自身の心身の健康です。
一人で抱え込まず、勇気を持って行動を起こしてください。
きっと解決の道筋が見えてくるはずです。
介護の仕事は本来、とてもやりがいのある素晴らしい職業です。
適切な環境で働くことができれば、必ずその素晴らしさを実感できるでしょう。
この記事が、同じような悩みを抱えている方の一助となることを心から願っています。あなたは一人ではありません。
著者プロフィール
みさき@介護福祉士ライター
経歴・資格
- 介護福祉士(2021年取得)
- 社会福祉学部卒業
- 介護業界経験:4年
- 現在:介護老人保健施設勤務
専門分野
- 高齢者介護
- 職場環境改善
- ハラスメント対策
- 新人介護職員の指導・サポート
メッセージ
介護の仕事は本当に素晴らしい職業です。
しかし、働く環境によってその素晴らしさを実感できないこともあります。
私の経験が、同じような悩みを持つ方々の力になれば幸いです。
一人で抱え込まず、必要な時は助けを求める勇気を持ってください。
感想
この記事、読んでみて本当に胸が痛くなりました。
介護職って本当に大変な仕事なんだなって改めて感じたし、みさきさんが体験されたことって、きっと氷山の一角なんだろうなと思います。
特に利用者からの不適切な行為について「認知症だから仕方ない」で片付けられてしまうの、本当におかしいですよね…。働く人の尊厳も守られるべきなのに。
上司からのパワハラの部分は読んでいて本当に腹が立ちました。「嫌なら辞めればいい」なんて、どの口が言うんだって感じです。
新人の頃って特に弱い立場だから、言い返すことも難しいし、一人で抱え込んじゃう気持ちもすごくわかります。
でも、みさきさんがちゃんと記録を取って、外部機関に相談して、最終的に転職で環境を変えられたのは本当に良かったです。
同じ介護職でも職場によってこんなに違うんですね。
この記事で一番印象的だったのは「ハラスメントは受ける側に責任はありません」という言葉です。
当たり前のことなんだけど、実際に被害を受けている時って「自分が悪いのかな」って思っちゃいがちなので、この言葉があることで救われる人も多いと思います。
具体的な対処法がたくさん書かれているのも実用的で良いですね。
特に転職時のチェックポイントは、介護職じゃない人にも参考になりそうです。
みさきさんのような経験をした人が、こうやって情報発信してくれることで、同じような境遇の人が一歩踏み出せるきっかけになると思います。
介護業界全体がもっと働きやすい環境になってほしいですね。